Greeting会長挨拶
会長就任の挨拶
米康充前会長の跡を襲い、2024年度より森林GISフォーラム会長に就きました鷹尾元と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
森林GISフォーラム(FGIS)は1994年に、地理情報システム(GIS)を森林管理の現場において普及・活用するために、森林経営者、森林行政官、賛助会員などGISの専門家、そして森林研究者の交流の場として設立され、お陰様で今年度に設立30周年を迎えました。30年前には夢にすら思わなかった様々なことやものが当たり前の世の中となりました。GNSSやレーザ計測などの技術は長足の進歩を遂げて、資源量の把握は正確かつ容易になりました。行政や林業経営の現場にはGISが普及して、様々な業務や企画立案が電子的に行えるようになりました。そして、人々の生活の中でも地図アプリの利用は当たり前となり、GISは身近な存在となりました。GISばかりでなく、森林管理もまた大きく変化しました。GIS普及の初期には、ある管理者がある森林を独占的に管理するという閉鎖的な森林管理がまだ主流でした。今では、森林の多様な機能と価値が広く認識されるようになり、様々な境界を超えて多くの利害関係者が現れました。最近では、脱炭素、GX、ESGなどの標語と共に川下から川上が「再発見」されています。一方で、手入れ不足の民有林が増え、一筆の森林の管理にも所有者、林業経営者、地元自治体などが複雑に関与するようになりました。所有と経営の分離が進むと、これまでとは異なる経営者やサービス提供者が森林管理に加わるようになりました。このように、森林管理は土地の境界を越え、様々な関係者が関与する、開放的で公共的なものになりつつあります。
現在の森林GISには、この開放的で公共的な森林管理を推進するための拠り所となる、森林情報の共通基盤としての役割が期待されます。その役割を強化するために、森林情報の標準化が進められています。FGISでは森林情報標準仕様分科会を設置して、技術の進歩や社会の変化に合わせた森林情報の標準的仕様を提案してきました。また、基盤情報として、森林基本図等の基本情報に加え、航空機レーザ測量データ等の公開も進められています。そこから、更なる高付加価値情報の開発・共有に繋がることが期待されます。そして、今後の森林GISには、単に地理情報そのものを共有する場としてだけではなく、地理情報の解析プロトコルや知識も共有し、新たな価値や知識を関係者が共同で作り出す、人と知識と情報を包み込む生態系としての役割が求められるでしょう。さらに、より大きな地理情報空間の中で森林以外の地理情報とも連結されて、地域全体の発展に寄与することでしょう。
さて、次の30年には森林GISにどのような変化が起き、その時に21世紀前半の森林GISはどのように振り返られるのでしょうか。今はまだ夢にも現れない世界が登場するのでしょうか。その時に向けて、これからの森林GISを皆様と共に育てていきたいと思います。
第16代会長 鷹尾 元